冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「小夜さんの料理、美味しい! このグラタン好き」

「よかった。いっぱい食べてね」

 マンションのダイニングテーブルには小夜が腕を振るった料理が並び、笑顔で食べている少女を小夜がにこにこと見つめている。

 桜がピンクから緑へと色を変えていく四月下旬。俺の患者だった山崎さやかちゃんの退院が無事に決まり、病院を離れることになった。今後の定期的な検査は地元の病院で行うので、こうして別れる前に小夜が彼女を家に招待したのだ。

「三神先生の私服、初めて見た! カッコいい!」

 やけにテンションが高いのは嬉しさ反面、別れを前にしての寂しさを誤魔化すためでもあるのだろう。

「さやかちゃん、中学校生活楽しんでね」

「うん。卒業式と入学式はリモートになっちゃったけれど……。中学の制服、とっても可愛いの。写真送ってもいい?」

「ぜひ、送ってね」

 入院していた頃はどこか大人びていた彼女だが、今は年相応に見える。俺は新聞に目を通した。

 贈収賄や薬機法違反の疑いなどで山本医師や石坂真子が逮捕され、ここからダミアノ製薬の不正が一気に明るみになり、連日世間を賑わせている。その影響で製薬会社はもちろん、医療業界に対する不信感も煽る結果となっていた。

 元社員として小夜も気にしているようだが、家ではあえてあまり話題にしていない。

 それにしても、このマンションで誰かの楽しそうな笑い声が響くのは、なかなか新鮮だ。今までの自分だったら考えられない。
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