冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 マンションのチャイムが鳴り、我に返る。小夜が時計に視線を送りながら、ゆっくりと立ち上がった。

「お母さん、お迎えじゃないかな?」

「えー、もう?」

 不服そうな声をあげるさやかちゃんを小夜がなだめる。

「さやかちゃん、また遊びにおいでよ」

 なかなか気軽に遊びに来られる距離ではないが、無理な話ではない。さやかちゃんは、ゆっくりと帰り支度を始める。そして小夜と共に母親に引き渡すため、見送る。

「今度はひとりで来られるように頑張る!」

 入院していた頃より背が伸び、幼さも抜けてきて彼女の成長を感じる。退院して元気な姿を見られるのが、医者としては一番嬉しい。

「三神先生、私を治してくれてありがとう。私ね、将来は三神先生みたいなお医者さんになりたい!」

 高らかな宣言に、目を細めた。

「頑張れよ」

「はい!」

 元気よく応えた彼女に小夜も声をかける。

「さやかちゃんなら、きっと素敵なお医者さんになれるよ。体に気を付けて頑張ってね」

「ありがとう、小夜さん。私ね、小夜さんに会えてよかった」

 その言葉に小夜が泣きそうな顔になった。つられたさやかちゃんも目に涙が浮かんでいる。

 そこに母親が顔を出し、改めて何度もお礼を告げられた。

「小夜さん、三神先生、またね!」

 大きく両手を振る彼女を見送る。ドアが閉まってからも小夜はしばらく手を振り返していた。

 さっきまで賑やかだった部屋が急に静かになる。
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