冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 彼はまた白いタブレットを口に含み、音を立て噛み砕いている。あれは、なんだろう?

 その問いの前に、今は聞くことがあった。質問の仕方をしばし考え、口を開く。

「三神さんが食べられるものってなんですか?」

 なにか口にされますか?と尋ねたら、必要ない、と一蹴されるだけだと予想し、方向性を変えつつ単刀直入に聞いた。もうこの際、デリバリーでいいから彼が口にできるものを準備したい。

「なんでも」

 ……ん?

 身構えていたのに、予想外の言葉が返ってきて聞き間違いかと疑う。

 まじまじと三神さんを見つめていると、彼は軽く息を吐いた。

「あれこれ好き嫌いを言うほど、好みもこだわりもない。食事自体面倒なんだ。生命活動の維持に必要な 栄養を摂取できれば十分だと思っている」

 ホテルで似たような発言をしていた気が……。

「でも人の作ったものはダメなんですよね?」

「ダメの定義が曖昧だが、押し付けられたり、ましてや見返りを求められたりするのは嫌なんだ」

 前髪を掻き上げ、三神さんは面倒くさそうに呟いた。

「仕事に加え資料の読み込みや、新しい術式について発表するための準備で慌ただしい中、食事に時間を割くのも惜しい 。そこを他人に強制されるのは正直不快でしかない」

「強制はしてませんけど?」

 一応、言っておく。強く念押しはしたものの彼が食事をとらないことを心配はしても非難はしなかった。

 すると不意に三神さんが口を閉ざし、こちらを見つめてきた。心臓がドキリと跳ねる。

「だから君を選んだ」

 低く落ち着いたいつもと変わらない声。はっきりと聞こえたのに、すぐに理解できなかった。

「今日は食事をとる」

「あ、はい。準備はしているので用意しますね」

 反応できないまま食事の支度を始める。
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