冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 一緒に住むためにふたりで話し合う必要があるだろうし、理由がなくても結菜と浩明さんは結婚を予定している恋人同士だ。都合がつくならお互いに会いたいに決まっている。

『いつまでもここにいてほしいくらい』

 もしかして私……結菜の邪魔になっているかな。

「急いで帰る必要がないなら、少し座ったらどうだ?」

 休憩を促され、迷いつつ小さく頷く。

 たしかに気を張っていたのもあって疲労感がどっと押し寄せてきた。

「では、お言葉に甘えます」

 とぼとぼと歩を進め、彼から死角になるようキッチンカウンターの裏に回り、そっと隅っこの方で腰を落として膝を抱えた。

 早く引っ越さないと……。

 頭を沈め、膝を抱きしめる腕に自然と力が入る。

「なにをしている?」

「え?」

 突然声が降ってきて私は頭を上げる。すると三神さんが覗き込むようにこちらを見下ろしていた。どこか不機嫌そうで、その迫力にしどろもどろになる。

「えっと、休憩を……」

「それは見ればわかる」

 ならどうしたのか。もしかすると場所が悪かったかな。キッチンで膝を抱えるなんて、彼のテリトリーで不快だったのかもしれない。謝罪を口にしようとしたら、三神さんは軽く息を吐いた。

「そんなところに座れと誰が言った?」

 予感が的中していて、慌てて立ち上がる。

「す、すみません――」

「テーブルに椅子がいくつもあるだろ?」

 言葉がかぶせられ、思わず息を呑む。彼がダイニングテーブルに目を遣り促すので、私は反射的に首を横に振った。
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