冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「ついでに食事もとっていくといい。どうせひとりは食べきれない」

 私の拒否をまるで無視して三神さんは進める。

「さ、さすがにできません。私は雇われている身です!」

「俺がいいと言っているんだ。それとも浩明や君の従姉は、ここで君が俺と同じテーブルについて食事を取るのを許さないのか?」

「そんなこと、ありませんけど……」

 弱々しく、でも断言はできる。結菜も浩明さんもそんな人じゃない。むしろふたりとも、三神さんがひとりで食べないなら私も一緒に食べたらいいのでは?と言っていたくらいだ。そんな状況にはまったくなりそうになかったから笑って流したけれど。

「だいたい、用意したのが君なら、最後まで責任を持つべきじゃないのか?」

 今まで平気で残してきた人がそれを言う?

 唇を尖らせ、心の中で反論する。すると、かたくなに拒否しているこの状況がなんだかおかしく思えてきた。

「ほら」

 そのタイミングで手を差し伸べられ、おずおずと彼の手を取る。すると力強く引かれ、私は三神さんのすぐそばで立つ形になった。距離の近さと触れた手の温もりに、心臓が一気に加速する。反射的にぱっと手を離すと、三神さんはすぐに踵を返してダイニングの方へ向かった。

 彼の背中を見つめ、渋々自分の分の食事も準備する。

 もしも逆の立場だったら、私も一緒に食べるよう声をかけるかもしれない。三神さんの場合は、本当に残りものの処理を頼むくらいの気持ちだろう。きっと他意はない。

 言い聞かせながら、気を引き締める。線引きはしっかりしないと。厚意だと素直に受け取り、散々痛い目を見たんだから。
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