冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「浩明が、君の従姉がいつも君の料理を褒めると言っていた」

「きゅ、急にハードルを上げないでください!」

 どう考えても結菜の感想は身内贔屓が入っているだろう。三神さんを安心させるためなのか、私のどういう情報が浩明さん経由で伝わっているのかは謎だ。

「さすがに豚の心臓を調理したことはありませんし」

「なんの話だ?」

 訳がわからないといった面持ちの三神さんに、私は眉をひそめる。

「三神さんがおっしゃっていたじゃないですか。欲しいものは新鮮な豚の心臓だって」

 なかなか強烈な印象を残す発言だった。あまりにもピンポイントで、新鮮さはやはり美味しさに関係するのか。こっそり豚の心臓の調理法も調べたくらい。

 どんな食べ方が好みなのか、少しだけ興味がある。ところが、どういうわけか三神さんは小さく噴き出した。

「なるほど。その発想はなかったな」

「え?」

 笑みを堪えながら返され、混乱する。

「食べるためじゃない。手術の練習や新しい術式を試す際、人間の心臓に近いとされている豚の心臓を使うことがあるんだ」

 彼の職業を知った今なら、納得する理由だけれど、食べる以外の選択肢がまったくなかった。恥ずかしさで肩を縮める。

「そ、そうなんですね」

 それにしても寝食さえ忘れて勉強と研究。手術を練習するために豚の心臓を欲しいものに挙げる。三神さんが、とんでもなくワーカホリックなのは間違いない。

 どうしたらそこまでストイックになれるのかな。会社を辞めた私には考えられない情熱と生活だ。三神さんが仕事に集中できるように、しっかりとサポートしよう 。改めて強く思った。

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