冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 夕飯の支度も終わったし、そろそろ帰ろう。ネットでいくつか見繕った物件を実際に見学しようと不動産屋に予約を入れている。

 やっぱり駅が近いと賃料の価格も上がる。このマンションは駅直通の好立地なので一体、いくらになるのやら。やっぱり仕事を決めてから物件は探すべきかな? でもそれを待っていたらいつになるかわからないし。

 頭を悩ませていると、突然電話がかかってきた。

 相手は三神さんだ。一応、連絡先を交換しているが 彼から電話がかかってきたことは一度もない。どうしたのかと思い急いで通話ボタンをタップする。

「もしもし」

『今、マンションか?』

 こちらの状況をなにも確認することなく相手は切り出してきた。

「あ、はい。そろそろ帰ろうとしていたところです」

『ちょうどいい。リビングに置いてあった本の上に、病院の封筒がないか?』

 病院の名前の入ったA3サイズの封筒は、整理する際に目についたので動かさずにそのままにしておいた。

「ありましたよ」

 答えながら移動して封筒を手に取った。おそらくこれのことだろう。

『それを今から病院まで持ってきてほしい』

「え?」

『受付に渡してくれたらいい。立て込んでいるから電話を切る』

 そう言って、宣言通り電話は切られてしまった。

 封筒とスマホを交互に見つめ、肩を落とす。

 たしかに私は雇われている身だけれど、もう少しなにかあってもいいんじゃない?

 都合が大丈夫かどうかさえ聞かれなかった。

 沸々と不満が湧き上がるものの忙しい状況で電話してきたのなら、これは本当に必要なものなのかもしれない。

 しょうがない。不動産屋さんはキャンセルしてまた今度にしよう。時計を確認すると午後三時前。ここから病院までは電車を乗り継いで十五分くらいで着く。車ならもっと早い。当たり前か、三神さんの職場で呼び出しだってあるだろうから。
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