冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「ご親戚の方ですね。承知しました、確認してお渡ししておきます」

 なぜか私の答えに女性の表情がぱっと明るくなり、笑顔で対応される。

 一体どうしたのか。とにかくこれで用事は済んだとホッと胸をなで下ろし、踵を返した。

 せっかくだから中庭を見に行ってみようかな。病床の母と天気のいいときは気分転換に何度か散歩にやってきた。

 中庭に続くドアを開けると、木々の葉は赤や黄色に色づき、落ち葉が柔らかな絨毯を作っていた。

 ベンチやテーブルが一新されていて、柔らかな太陽の光がほんのり暖かい。今日はいい天気だ。日が落ちるのがだいぶ早くなっているので、今は貴重な時間だ。

「ねぇ」

 ぼんやり日の光を浴びていると不意に声をかけられ、心臓が口から飛び出そうになった。

 振り返ると、十歳くらいの小柄な少女が立っている。上下淡い桃色のパジャマに赤いカーディガンを羽織っていて、肩下まで伸びた髪は簡単にふたつにくくられていた。

 さらに彼女は簡易な移動式モニターを装着していた。おそらく入院患者だろうとすぐに見当がつく。

「な、なに?」

 もしかして部外者は立ち入り禁止だったとか?

 ドキドキしながら尋ねると、彼女は大きな瞳で私をじっと見つめてくる。

「お姉さんは三神先生の知り合いなの?」

「え?」

「さっき受付で三神先生の名前を言ってたから……」

 どうやら受付のやり取りを耳にしていたらしい。私は改めて彼女の方に向き、小さく頷いた。

「うん。親戚で、彼に頼まれたものを持って来たの」

 私の答えに、少女の顔がぱっと明るくなった。
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