冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「どっちかと言ったら、小夜さんが三神先生の恋人と思われたんじゃないのかな?」

「こ、恋人?」

 子ども相手に真面目に返す。しかしさやかちゃんは私よりよっぽど落ち着いていた。

「だって三神先生に頼まれて持ってくるなんて、すごく仲がいいん でしょ? 三神先生、恋人がいるとか、家はどこらへんでどんなふうに過ごしているのか、自分のことは全然話してくれないもん」

 なるほど。三神さんの名前を受付で出したときの鋭い視線や、親戚と告げた途端、にこやかな対応になったのは、そういう意味だったのかもしれない。納得しつつ、さやかちゃんにもしっかり否定しておく。

「今回はたまたまタイミングが重なっただけで、私と三神先生は親戚だけれど、それほど親しいわけではないの」

「そっか。うーん、じゃあ三神先生はひとりなんだ」

 ひとり、の意味がすぐにはわからないが、さやかちゃんは複雑そうに呟いた。

「三神先生……ちょっとは元気になった?」

 打って変わって、さやかちゃんは心配そうに尋ねてきた。しかし私は返答に困る。三神さん、どこか体調が悪かったの?

 私の顔色を読んだのか、さやかちゃんはふいっと前を向く。彼女の寂しげな横顔が目に入った。

「同じ階で入院していた友達が……三週間前に死んじゃったの」

 思わぬ発言に目を見開く。

「私よりひとつ下で、私とは違うけれど心臓にも病気があって三神先生が担当だったから、ふたりで三神先生ってカッコいいねっていっぱい話してたんだ」

 淡々としながらも、さやかちゃんの声には、受け止めきれていない悲しさや衝撃が込められている。
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