冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 温かいカフェラテが運ばれてきたので軽く店員に頭を下げる。泡立ったミルクにリーフの模様が可愛い。飲むのがもったいないと思いつつカップの縁に口をつける。

 外を向きに設置されたカウンター席に座り、隣に大きなトートバッグを置いた。道行く人を眺めながら、薄紫の空が暗くなるのはあっという間と感じる。

 今日は三神さんに振り回されてばっかりだな。

 帰り際に電話がかかっていることに気づき、ディスプレイを見ると相手は三神さんだった。封筒を無事に受け取ったという報告だと思い、なんの疑問もなく電話に出る。

『お疲れ様です。封筒、無事に受け取られました?』

『ああ。ついでにもうひとつ頼みたいことがある』

『……え?』

 お礼を言われるどころか次の用事を申しつけられる展開となった。

 なんでも洋書専門店で注文している本が今日届いているらしいのだが、閉店時間までに間に合わないから 、代わりに取りに行ってほしいと内容だ。

 取りに行かなくても家まで送ってもらったらいいのに。

『配送にかかる時間が惜しい』

 考えを読んだかのように先に念押しされ、不動産屋を断ったのもあって時間が空いている私は渋々了承した。

 電車を乗り継いで降りた駅から店はそう遠くはなく、大通りからやや奥まった場所に位置していた。初めて入る建物に緊張しつつ足を踏み入れると、本独特の香りに包まれ並ぶ書籍は洋書ばかりなので、まるで外国に来たかのような錯覚になる。
< 39 / 166 >

この作品をシェア

pagetop