冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
初老の優しそうな店主に三神さんの名前を告げると、彼は目を細め、奥から本を何冊か持ってきた。想像以上に分厚い横文字の本が五冊。これは結構な重さになる。
これを見越してなのか、書店の二軒隣にあるカフェで待つように三神さんに指示された。さすがにこれを持って電車で帰ってこいというほど彼も鬼ではなかったようだ。私の心配というより本の心配というほうが正しいのかも。
ふうっと息を吐く。
それにしても、雇われている立場とはいえ用事を頼まれるのがどれも突然すぎじゃない?
『他の先生は自分が喋りたいことだけ喋って私の言うことは聞いてくれないのに、三神先生は違う。忙しくても、きちんと向き合ってくれるんだ』
『猫の手以下でも、ないよりはマシだと思ったんだ』
心の中で文句のひとつでも言ってやろうと思ったけれど、やめた。
三神さんがただのワーカホリックではなく、患者のために頑張っているお医者さんだって知ったから。猫の手以下でも役に立てているならそれでいい。
それに、きっと彼に頼まれなかったらこの素敵なカフェにも外国みたいな書店にも一生足を運ぶことはなかった。そう思うと縁ってつくづく不思議だ。
「桑名さん?」
女性の声に反射的に肩を震わせる。一瞬、幻聴を疑ったが、おそるおそる呼ばれた方を向いた。
「石坂さん……」
シアーブラウンの髪が肩下で揺れ、ばっちりメイクを決めた姿は相変わらずだ。彼女は石坂真子さん。ダミアノ製薬会社で私の先輩だった人だ。
これを見越してなのか、書店の二軒隣にあるカフェで待つように三神さんに指示された。さすがにこれを持って電車で帰ってこいというほど彼も鬼ではなかったようだ。私の心配というより本の心配というほうが正しいのかも。
ふうっと息を吐く。
それにしても、雇われている立場とはいえ用事を頼まれるのがどれも突然すぎじゃない?
『他の先生は自分が喋りたいことだけ喋って私の言うことは聞いてくれないのに、三神先生は違う。忙しくても、きちんと向き合ってくれるんだ』
『猫の手以下でも、ないよりはマシだと思ったんだ』
心の中で文句のひとつでも言ってやろうと思ったけれど、やめた。
三神さんがただのワーカホリックではなく、患者のために頑張っているお医者さんだって知ったから。猫の手以下でも役に立てているならそれでいい。
それに、きっと彼に頼まれなかったらこの素敵なカフェにも外国みたいな書店にも一生足を運ぶことはなかった。そう思うと縁ってつくづく不思議だ。
「桑名さん?」
女性の声に反射的に肩を震わせる。一瞬、幻聴を疑ったが、おそるおそる呼ばれた方を向いた。
「石坂さん……」
シアーブラウンの髪が肩下で揺れ、ばっちりメイクを決めた姿は相変わらずだ。彼女は石坂真子さん。ダミアノ製薬会社で私の先輩だった人だ。