冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「びっくりした。まさかこんなところで会うなんて……。新しい仕事は見つかった?」
にこりと微笑み彼女は尋ねてきたが、素直に答える気にはなれない。むしろ会話もしたくない。
「突然、辞めちゃうんだもの。森下課長も残念がっていたわよ」
黙っている私に石坂さんはさらに続けてくる。彼女の口から出た名前に、心臓が早鐘を打ち出した。当時の出来事と暗い感情が心を覆っていく。
ボルドーでくっきりと縁取られた石坂さんの唇の端がにやりと上がった。
「あんなに可愛がってもらっていたのに」
「私は――」
反射的に言い返そうとして口を噤む。石坂さんの向こうからこちらに真っ直ぐ近づいてくる男性の姿が目に入ったからだ。
ボタンダウンシャツにグレージュのトップスを重ね、テーパードパンツにステンカラーコートを羽織っている姿はモデルさながらの佇まいで圧倒される。それは石坂さんも一緒なのか、三神さんに視線を送り硬直していた。
「電話に出ないと思ったら話し中か」
石坂さんに目もくれず、三神さんは私に声をかけてきた。彼の指摘に慌ててスマホを確認しようとする。
「え、あ……すみません」
「責めていない」
すぐさま言葉をかぶせられ、三神さんは私の隣に置いてあった鞄を持ち上げる。
「意外と重いな」
「おかげで苦労しました」
わずかに唇を尖らせる。すると三神さんはさりげなく伝票を取った。
「あのっ」
自分で支払うと申し出ようとしたら、先に石坂さんが声をあげた。おかげで私の意識はまた彼女に向いた。
にこりと微笑み彼女は尋ねてきたが、素直に答える気にはなれない。むしろ会話もしたくない。
「突然、辞めちゃうんだもの。森下課長も残念がっていたわよ」
黙っている私に石坂さんはさらに続けてくる。彼女の口から出た名前に、心臓が早鐘を打ち出した。当時の出来事と暗い感情が心を覆っていく。
ボルドーでくっきりと縁取られた石坂さんの唇の端がにやりと上がった。
「あんなに可愛がってもらっていたのに」
「私は――」
反射的に言い返そうとして口を噤む。石坂さんの向こうからこちらに真っ直ぐ近づいてくる男性の姿が目に入ったからだ。
ボタンダウンシャツにグレージュのトップスを重ね、テーパードパンツにステンカラーコートを羽織っている姿はモデルさながらの佇まいで圧倒される。それは石坂さんも一緒なのか、三神さんに視線を送り硬直していた。
「電話に出ないと思ったら話し中か」
石坂さんに目もくれず、三神さんは私に声をかけてきた。彼の指摘に慌ててスマホを確認しようとする。
「え、あ……すみません」
「責めていない」
すぐさま言葉をかぶせられ、三神さんは私の隣に置いてあった鞄を持ち上げる。
「意外と重いな」
「おかげで苦労しました」
わずかに唇を尖らせる。すると三神さんはさりげなく伝票を取った。
「あのっ」
自分で支払うと申し出ようとしたら、先に石坂さんが声をあげた。おかげで私の意識はまた彼女に向いた。