冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「引きつった顔で視線も泳ぎっぱなし。君にとってそういう相手だと判断したんだ」

 あっ……。

 石坂さんに対する三神さんの態度は、私が彼女に対して抱いているマイナスな感情を汲んでのこともあったらしい。

 理解して、なんだか目の奥がじんわりと熱くなる。

 そうだ、三神さんは冷たいだけの人じゃない。でもまさか私の様子を気にかけたうえでの対応とは思ってもみなかった。ぐっと息を飲み、弱々しく呟く。

「はい。できれば彼女とは会いたくなかったですし、早くあの場を去りたかったんです」

 口にして、少しだけ楽になる。仮にもお世話になった仕事の先輩で、そんなふうに思ったり、ましてや口に出したりするなんてもってのほかだと思っていたから。

「……お手数おかけしました」

 全部の事情と感情を含めて、素直に三神さんに言えた。胸のつかえがとれ、どこか安堵する。

「用事を頼んだのはこっちだったからな」

 そう言って再び歩を進める三神さんの今度は横に並ぶ。

「その本で合っていますか?」

「ああ」

 尋ねると、彼は軽く本の入ったトートバッグに軽く目を遣る。

「新しい本が入ったからって、一気に読みすぎて寝不足なんてならないでくださいね」

 無駄と思いつつたしなめるが、やはり返事はない。

 念押ししようとして、気づく。店を出で三神さんは私の半歩先を歩いていたが今は隣にいる。私の歩くペースは変わっていない。そうすると彼わずかに歩調を緩め、が私に合わせてくれているのだろう。

 ずるい。さっきからさりげない優しさばかり見せられ、お礼を言うタイミングも掴めない。
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