冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 スマホを持つ手が震える。一一九番にかけるなんていつ 以来なのか。

 すぐに電話はつながり、極力冷静に状況と場所を伝える。医師がそばにいることも一応付け加えた。外ではあるが幸い駅の近くで人通りが多い分、現場はわかりやすいだろう。

「救急車、十分ほどで来るみたいです」

「わかった」

 三神さんに伝えると、彼は戸田さんの脈を測り、もうひとりの男性に尋ねる。

「この方の持病や飲んでいる薬などあるかご存知ですか?」

「健康診断であっちこっち引っかかっているとは言っていたが、持病までは……」

 動揺して、しどろもどろになりながら男性は答える。

「あっ、秋花粉がひどくて薬を飲んでいると言っていた」

「……そうですか。今日は何時からどれくらいの量のアルコールを飲みました?」

「えっと、今日は――」

 不安からか早口になる男性に対し、三神さんの口調は冷静でどこか余裕を感じられた。だからか、相手も少しずつ落ち着きを取り戻して質問に答えていく。

 戸田さんの体を横向きにし、三神さんが自分のコートを彼にかけ、しばらくしてから救急車がサイレンの音と共にやってきた。

「連絡をくださったのは?」

「私です」

 救急隊に手を上げて答えると、三神さんがひとりの隊員に告げる。

「意識レベルJCSで200以上。徐脈、顔面蒼白、外傷なし」

 三神さんの言葉をメモするように、隊員はタブレット画面に触れていく。

「口腔内に吐瀉物なし、爪先にチアノーゼ、低体温。抗ヒスタミン薬の服用あり。急性アルコール中毒の疑いがある」

「ありがとうございます。ちなみに先生は何科ですか?」

「心外です」

 短いやりとりを交わし、戸田さんは救急車に乗せられる。付き添いは一緒にいた男性が申し出た。彼なら戸田さんの関係者や会社など連絡する先を知っているだろう。
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