冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「お風呂、先にありがとうございました。服も貸していただいて……」

「ああ」

 短く返され、お湯を張り替えている旨をぎこちなく付け足す。

「まるで子どもだな」

 居心地の悪さを感じていると三神さんがふいに呟いた。

「しょうがないじゃないですか。三神さんの服、大きいのでこうするしかなくて……」

 徐々に勢いがそがれていく。きっと子どもみたいだと言われた理由はそれだけじゃない。

「着られたのならよかったんじゃないか」

 どこかからかいを含んだ言い方に、へたに言い訳するのをやめた。そのとき、三神さんがまたケースから白いタブレットを取り出したので、ついに尋ねる。

「それ、なんですか?」

 栄養剤とか、なにかサプリ?

 三神さんの答えを待っていると、彼にちょいちょいと手招きされるのでそばに寄る。そして彼の手からタブレットがひとつ手渡された。

「え?」

「食べたらわかるんじゃないか」

 なぜ、普通に教えてくれないのか。ドキドキしながら口の中に放り込むと、なんだか食べたことのある味だった。迷いつつ噛んでみるとシュワっと口の中で溶ける。

「……ラムネ?」

 子どもの頃によく食べた駄菓子の味がする。

「手術後や一気に集中した後は脳を回復させるために、手軽にブドウ糖を食べている」

 つまりはラムネのことらしい。そこまで脳を酷使する大変な職業なのだと思う反面、ラムネを食べているのだと思うと、なんだか微笑ましい。
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