冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
『ご両親がいない君のことがつい気になってね。たまには外で美味しいものでもって思うんだ』
気にかけてもらえるのはありがたいが、私はもう大人で社会人だ。贅沢はできなくても自分の好きなものを、外で美味しいものを食べることくらいできる。
なにより彼は既婚者だ。いくら娘のように思っていてくれても何度もふたりで会うのはどうなのか。
そう言ってしまうと彼の親切心を無下にしてしまう気がして、私の方が悪い気がしてくる。
『桑名さん、せっかく森下課長が気にかけて誘ってくださっているんだから、用事を別の日にして、いってきたら? 上司とコミュニケーションを取るのも仕事のうちじゃない?』
私とは必要最低限の会話しかしないようになっていた石坂さんが、こういうときだけはちゃっかり口を挟んでくる。おかげで断れない空気感に、渋々誘いに何度か応じたが、これが仕事だと私は割り切れなかった。でも森下課長にお世話になっているのも事実だ。
一方で、親子ほど年が離れているとはいえ、森下課長とふたりになるのが徐々に苦痛になっていた。今思うと、上司の立場を超え、踏み込まれている感じが嫌で苦しかったのだ。けれど、私が自意識過剰なだけなのかもしれない。
言い聞かせながらも、モヤモヤした思いを抱えたまま仕事だけはきちんとやろうと、そちらに舵を切った。
完全に森下課長が無理だとなったのは、休んだ人の分の仕事を石坂さんから回され、ひとりで残業していたときだった。
森下課長が現れ、私は最低限の受け答えをしながらキーボードを叩き、パソコンから視線を逸らさずにいた。
気にかけてもらえるのはありがたいが、私はもう大人で社会人だ。贅沢はできなくても自分の好きなものを、外で美味しいものを食べることくらいできる。
なにより彼は既婚者だ。いくら娘のように思っていてくれても何度もふたりで会うのはどうなのか。
そう言ってしまうと彼の親切心を無下にしてしまう気がして、私の方が悪い気がしてくる。
『桑名さん、せっかく森下課長が気にかけて誘ってくださっているんだから、用事を別の日にして、いってきたら? 上司とコミュニケーションを取るのも仕事のうちじゃない?』
私とは必要最低限の会話しかしないようになっていた石坂さんが、こういうときだけはちゃっかり口を挟んでくる。おかげで断れない空気感に、渋々誘いに何度か応じたが、これが仕事だと私は割り切れなかった。でも森下課長にお世話になっているのも事実だ。
一方で、親子ほど年が離れているとはいえ、森下課長とふたりになるのが徐々に苦痛になっていた。今思うと、上司の立場を超え、踏み込まれている感じが嫌で苦しかったのだ。けれど、私が自意識過剰なだけなのかもしれない。
言い聞かせながらも、モヤモヤした思いを抱えたまま仕事だけはきちんとやろうと、そちらに舵を切った。
完全に森下課長が無理だとなったのは、休んだ人の分の仕事を石坂さんから回され、ひとりで残業していたときだった。
森下課長が現れ、私は最低限の受け答えをしながらキーボードを叩き、パソコンから視線を逸らさずにいた。