冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
『最近、頑張りすぎていないかい? 石坂さんから聞いている。甘えたいなら、いつでも私を頼ってくれてもいい。桑名さんのことは部下というよりも娘のように思っているんだから』

 そう言って不意に肩を抱いてきたので、私は反射的に払いのけ立ち上がった。

『けっこうです。お気遣いは感謝していますが、森下課長に父の代わりは求めていません。あなたは上司です。食事も、もう行きませんから。その代わり、仕事にしっかり励んで恩返しします』

 拒絶感が溢れ、言い切ってから軽く頭を下げ作業に戻る。

 この日から、森下課長の私に対する態度はあからさまに悪くなった。

潤豊(じゅんほう)病院へ持っていく資料に大きな数字のミスがあった。先方は大変お怒りで、うちの上層部も頭を抱えている』

 私が作成した書類で重大な誤記があり、フロアは騒然となった。担当した私が責められる流れになったが、まったく覚えがない。

『待ってください。私、きちんと入力しました。石坂さんに確認もしていただき――』

『私、見せてもらってないわよ? 勝手に送って間違えたのを人のせいにしないで』

 そんなはずない。私は彼女にチェックをお願いした。でも、どうしてそんな数字が?

『どう責任を取ってくれるんだ?』

 森下課長が厳しい表情で詰め寄ってくる。謝るべきなのか。でも、私は本当になにも………。

『こんなとき謝罪のひとつもできないのか。親が早死にして、ろくな教育を受けていないんだな』
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