冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 吐き捨てるように言われ、硬直する。周りはますますざわつき、石坂さんはどういうわけか、ほくそ笑んでいた。

 彼女の仕業だと思ったが証拠もない。なにより森下課長は最初から私のせいだと決めつけている。

 結局、私が頭を下げることでなんとかなったが、事態はそれだけで終わらず、たびたび身に覚えのない私のミスで問題が起こった。

 弁明しても、決めつけられ皆の前で責められて怒鳴られる。その繰り返しに私の気持ちはすり減っていった。

『やっぱり両親がいないと常識を知らないのかしら』

『迷惑ばかりかけて。帰る実家もないからお金のために居座っているんでしょうけど』

 石坂さんが裏で私のことを悪く言っているのを聞いた。会社は働くところで、親しい関係を築く必要はない。言い聞かせながらも、良くしてくれていた先輩の冷たい態度は、やはりショックだった。

 とにかく仕事で挽回しようと営業用に丁寧でわかりやすい資料を作成し、研究データをまとめた。

 しかし苦労して作ったものを、石坂さんが作成したことにされたとき、心が折れてしまった。彼女の父親はダミアノ製薬の重役だ。理不尽な振舞いが許されている理由はそこにもある。

『辞めます』

 退職願を森下課長に提出した際も冷ややかな対応をされたが、おとなしく頭を下げる。社員寮を出るための準備もあり、それからは有給休暇を取得し、静かに会社を去った。
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