冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
第三章 結婚前の完璧なインフォームドコンセント
 やってしまった。

 三神さんのマンションに向かいながら、泊まったときの出来事を思い出しては自己嫌悪の渦に包まれていく。あの日からもうすぐ一週間が経とうとしているのに――。

 彼がバスルームに消えた後、手持ち無沙汰になった私はソファで不動産屋のサイトをチェックしていたのだが、あろうことかそのまま寝てしまったのだ。しかも朝にブランケットがかけられた状態で三神さんに起こされる始末。

『おはよう……ございます』

『おはよう』

 視界にぼんやりと三神さんの整った顔が映っている。どうして三神さんがいるの? ましてや彼が挨拶を返すなんて、これはきっと夢に違いない。そう結論づけた瞬間、意識がクリアになった。

『す、すみません、先に寝ちゃって……。とりあえず朝ごはんの準備をします!』

 半ばパニックになりながら慌てて朝食の支度をするために体を起こす。家の主よりも先に寝て、後に起きるなど、あってはならない。三神さんは特段気にしていない様子だったけれど、その冷静さが逆に自己嫌悪に陥らせた。

 雨はすっかり上がっていて、自分の失態を意識する間もなく動き出したが、こうして数日経った今も、引きずっていたりする。

 あれから三神さんとは会っていない。元々彼は、マンションにいる方が少ない。彼の勤務体系を把握はしていないけれど、当直がある日は家に帰って来ないし、自宅にいても病院からの呼び出しでそのまま一日帰ってこないこともある。土日も学会やら研究会やら、忙しそうだ。
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