冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「会社を辞めた私と、あなたはもうなんの関係もありません。正直、顔も見たくないです。こういうこと、二度としないでください」

 きっぱりと告げると、森下課長は膝から崩れ落ちそうになった。

「そういうことです。次はありませんから、そのつもりで」

 心臓がバクバクと音を立てる中、三神さんに中に促され、私は振り返らず歩を進めた。

 外の寒さから空調の整えられた内部の温度差に自然と体が震える。それは一瞬で、違う意味で震えが止まらなくなった。

「大丈夫か?」

 私の異変に気づいた三神さんに声をかけられ、気丈に振る舞う。

「だ、大丈夫です」

 そこで、三神さんにまだ肩を抱かれたままだと思い至った。もう森下課長はいないんだから、離れないと。足を動かそうとしたら逆に肩を抱き寄せられた。

「無理をするな」

 先ほどとは違って優しい声色になんだか泣きそうになる。三神さんのおかげではっきり森下課長を拒絶できたが、彼はわざわざ住所を調べて私に会いに来たと言っていた。さらに、ここまでついてきたと。

 その行動に恐怖しかなく、さっきから震えが止まらない。

 三神さんの部屋につき、少しだけ落ち着きを取り戻した。

「あの、さっきはすみませんでした。ありがとうございます」

 続けてスマホを取り出す。

「結菜に連絡しないと……」

 なにもないかもしれないが、あんな行動を起こした森下課長に家を知られているのを、そのままにしておけない。もしも結菜になにかあったら……。

 せっかく私を家に置いてくれたのに、こんな迷惑をかけるなんて最悪だ。
< 71 / 166 >

この作品をシェア

pagetop