冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 泣きそうになりながら電話をかけようとするが、三神さんに止められた。

「少し落ち着け。彼女なら浩明がいるから大丈夫だ 。どうせ一緒に住む段取りをしていたし、今も浩明のマンションによく泊まっているんだ。帰るときは浩明に付き添わせたらいい」

「そう、かもしれませんが……」

 たしかに、こんな気持ちが落ち着かない状態で 電話をしたら結菜に心配をかけるだけだ。冷静さを取り戻さないと。三神さんから先に浩明さんに連絡してくれると申し出があったので、素直にお願いする。

「人のことより、まずは自分の心配をしたらどうだ?」

 あきれた口調で言われ、私は自分の状況を伝える。

「新しく住む場所をもうある程度絞ったので、そのうちのひとつと本契約して、極力早めに引っ越すようにします」

 だから私を気にせず、結菜には早く浩明さんと新生活を初めてほしいし 、浩明さんには極力結菜のそばにいてほしい。

「その必要はない」

 ところが、私の考えは三神さんにあっさり却下された。『どうして?』と尋ねる前に彼が続ける。

「ここに住めばいい」

 ここ、というのはこの部屋? 誰が?

「えっと……」

 とっさのことで混乱していると、彼は私をまっすぐに見つめ、軽く微笑んだ。

「結婚するんだろ?」

 そこで意味がつながり、慌てる。

「あ、あれはですね。三神さんが私を庇うためについた嘘に乗ってしまっただけで……」

 私とは対照的にどこまでも余裕たっぷりの三神さんに、少しずつ平静を取り戻す。

「とっさに、ありがとうございます。でも、今はからかわないでください」

「からかっていない。本気だ」

 懇願するように告げると、間髪を入れずに返された。
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