冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「俺と結婚してほしい」

 先ほどの比ではない衝撃が走る。頭が真っ白になるとは、このことだ。

「結、婚?」

 おかげでおうむ返しをすることしかできない。誰と誰が?

「君と俺が」

 心の中を読まれたのかと思った。それよりも勘違いでも聞き間違いでもなく、どうやら額面通りの意味らしい。理解して衝撃は動揺に変わる。

「な、なんでですか?」

 だって三神さん、私のことが好きなわけでもないし、むしろ最初は嫌われている勢いだったし。そもそも私だって三神さんのことを……。

「お互いに結婚すると都合がいいからだ」

 思考が停止しそうになっていたところに彼が続ける。

「世の中、お節介の人間が多くて、独身でいるばかりに知り合いや関係者から結婚相手にどうだと女性を散々宛がわれ、辟易していたんだ。立場的に無下にできず会ったとしても、全部時間の無駄だ。そういった煩わしさから解放される」

 心底迷惑だといった声と表情にわずかに胸が痛む。ホテルのラウンジで初めて彼と会ったとき一緒にいた女性も、おそらく不本意なお見合いだったのだろう。

「なにより信用できるハウスキーパーがいなくなると困る」

「辞めるつもりは……」

 言いかけて不意に目が合い、心臓が跳ねる。しかし三神さんは厳しい顔になった。

「結婚していないと知ったら、あの男はまたつきまとってくるかもしれない 。それに、引っ越し先の住所がバレたらどうするんだ? 今度はそうそう住まいを変えられないだろうし、そこがここよりセキュリティがいいとも思えない」

 彼の言い分は納得できるが、森下課長にとっさについた嘘をきっかけに結婚を決められるほど私は単純ではない。結婚に対して、それなりに理想だってある。
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