冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「でも……結婚は、好きな者同士がするものじゃないんですか?」

 結菜と浩明さんみたいに、愛し合っているふたりが時間をかけて辿りつくものではないのか。

「そんな決まりが?」

 皮肉めいた三神さんの言葉に、眉尻を下げる。たしかに決まりはないけれど……。

「形だけでも誠意は尽くす。それは約束する。だから、お互いに嫌いじゃなければいいんじゃないか」

 幾分か穏やかな声色で付け足される。フォローのつもりか、なんなのか。

 でも……三神さんは仕事として私を必要としていて、心配もしてくれている。愛がなくても、結婚してもいいと思ってくれているんだ。

  なんだか心が温かくなる。この気持ちはどうしてなのか。はっきりはさせられないけれど、相手が誰でもいいわけではない。彼だからだ。

「せ、籍を入れるって一大事ですよ? ご両親や職場の方も巻き込むことになりますし」

 再度、三神さんの意思を確認するよう訴える。しかし三神さんはものともしない。

「まぁ、職場に出す書類が面倒ではあるな」

 そういう問題ではないと思うけれど、彼が気にするのはそこなんだ。急におかしくなって笑みがこぼれた。

「ふふふ。それくらいは頑張ってください」

 笑っていると、三神さんの視線を感じ、唇を引き結ぶ。どうしよう。気に障ったかな。

 すると彼は前髪に軽く指を通し、目を細めた。

「そう言うってことは、俺と結婚してくれるんだな?」

 優しい表情と声に、つい見惚れる。私は小さく頷いた。

「まだ、その……信じられない気持ちはありますけれど、もしも三神さんと結婚するなら、少しでもあなたに相応しくなるように、努力はするつもりです」

 こんなふうに結婚を決めるのは間違っているのかもしれない。ありえない動機だ。でもどんな形でも、三神さんが私を結婚相手に選んでくれたのを、嬉しく思えた。それが答えなのかもしれない。
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