冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 元々結菜のところでも居候の身だったので、あまり荷物は多くなく引っ越しは比較的スムーズに済んだ。

 三神さんと暮らし始めることを結菜にどう説明しようか悩んだが、森下課長の一件を聞くや否や『浩明さんの弟さんがかまわないなら、絶対にそっちの方がいい!』と、むしろ同居を強く勧められた。

 さすがに結婚するとまでは言えず、結菜にとっても浩明さんにとっても、私がここで住むのは仕事の延長線上のものという認識だ。

 結婚をこんなふうに決めてしまってもよかったのかな?

 結菜と浩明さんを見ていると、自分の決断が揺らぐときがある。でも出会って一日で結婚を決めたり、親同士が決めた相手だったり、いろいろな形があるわけだし。

 三神さんのご両親はアメリカにいるそうで、それは結菜からも聞いていた。だから直接お会いすることはできず、ひとまず三神さんのお母さんにだけ電話で挨拶をした。

 三神さんの結婚をお母さんはものすごく驚いていたけれど、喜んでいた。口調から上品で優しそうな方だというのが伝わってきて、少しだけ安堵する。

 お母さんは国際弁護士として活躍し、お父さんは医師としてアメリカの大学病院で働きながら全日本医師協会の理事も務めている。ものすごい経歴を持つご夫婦だ。しかも、それぞれ息子が同じ道に進んだことになる。

 エリート一家なんだ。

 まったく釣り合っていない私が彼の結婚相手でいいのかとつくづく感じるが、三神さんにとって釣り合いや感情は重要ではなく 、利害が一致したから私を相手に選んだ、それだけだ。でも私も納得した。

 一度きりの人生、結婚を経験しておくのも悪くない。

 とはいえ――。
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