冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 まじまじと見つめていると不意に手を取られる。瞬間的に引っ込めそうになったが、指先をしっかり握られ、左手の薬指に指輪がはめられた。触れられたところ が異様に熱くて、金属のひんやりとした指輪の感触と相まって心拍数が上昇する。

 三神さんは所作にまったく無駄がないのは、さすがというべきか。いつもより距離の近い彼の顔から視線を外し、指輪に集中する。

「綺麗」

 これは本音だ。三神さんにとっては、なんでもよかったのかもしれない。でも、忙しい中、わざわざお店まで私を連れて行って、結果的にこの指輪を選ばせてくれた。

「ありがとうございます……大事にします」

 笑顔でお礼を告げると、三神さんはこちらをじっと見つめてきた。その視線の意味がわからず、恥ずかしさも相まって目を泳がせる。すると、どういうわけか彼の指先が私の頬に触れた。

「ひゃっ!」

 思わず声をあげて、彼を見る。不意打ちなのもいいところだ。

「な、なんですか?」

「これくらいの接触で緊張されていたら困るんだが?」

 落ち着いた声で返され、夫婦として不安を覚えられているのだと申し訳なくなる。

「すみません」

「謝るな。無理をさせたいわけじゃない。ただ……」

 珍しく三神さんが言い淀んだので彼の方をうかがう。

「あの、三神――」

「成明、だろ?」

 しかし、すぐさま訂正されぎこちなくも彼を見た。

 まだ慣れず、ずっと名字で呼んでいたので正直照れてしまう。でも今日は彼の婚約者として隣に立つのだからしっかりしないと。

「はい。成明さん」

「よろしく頼むよ、奥さん」

 今度は幾分か、からかいを含んでから彼は告げた。
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