冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 行きと同じく成明さんの車に乗り込み、シートベルトを締める。降りる沈黙に堪えられず、私から切り出す。

「先ほどはすみませんでした」

「小夜が謝る必要はない」

 言い切られたものの気にせずにはいられない。

「山本先生とは、大丈夫ですか?」

 私と石坂さんの影響で、成明さんと山本先生との関係まで悪くなってしまったら……。

「問題ない。彼は俺の父に取り入りたいだけで、最初から俺に興味はまったくないんだ。姪を宛がおうとしたのも、なんとか父と繋がりを持ちたいからだろう」

 面倒くさそうに成明さんが語る。言い方や表情からして、本音なのだろう。ホッと胸を撫でおろし、別の角度に考えがうつった。

「だったら山本先生、もったいないですね。成明さんのお父様は立派な方だと思いますけれど、成明さん自身もすごく魅力的なお医者様なのに」

 成明さんには、まったくもって失礼な話だ。

 唇を尖らせムッとしていると、隣で小さく噴き出した気配がした。目を遣ると、成明さんが笑みをかみ殺している。珍しい光景に戸惑いが隠せない。

「そ、それにしても三神家は親子二代でお医者様なんて優秀ですね。やっぱり遺伝もあるんでしょうか?」

 彼を直視できずに高鳴る胸を押さえて、さりげなく話題を変えて尋ねる。すると三神さんは途端に笑みを潜めた。空気が変わり、なにか余計なことを言ってしまったのかと不安に駆られる前に、彼がゆっくりと口を開く。
< 83 / 166 >

この作品をシェア

pagetop