冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「……私も、妻としてどんなことがあっても成明さんの味方でいますから!」

 彼が私と結婚して求めているのは、そういう役割ではないかもしれない。むしろ望んでおらず、余計なことだと思われるかも。

 でも、私に伝えられる精いっぱいの気持ちだった。

 成明さんの反応が怖い。そのとき不意に、頭に温もりを感じた。彼の大きな手が乗せられ、軽く撫でられたと自覚する頃には、成明さんの手はハンドルに戻っていて、いつも通りだった。おかげで現実かどうか疑いそうになる。

 けれど、心なしか口元がわずかにゆるんだ横顔に胸が締めつけられる。

 もうずっと、心臓がおかしい。こんな事態は初めてだ。成明さんに相談するべきなのかもしれないが、原因ははっきりわかっていた。

 私、成明さんに恋をしている。最初は変わり者で他者を寄せ付けない冷たい人という印象だったのに。

『君が気に病む必要はない』

『仕事とは関係のない個人的な事情を批判してくる人間の言葉を気にするだけ無駄だ』

 どうしていつも、前を向けるようにしてくれるんだろう。

 どうしよう、私……。一時的なものでも、仕事としてでもなく、成明さんの奥さんでいたい。彼が私を妻にした理由に、そんなものはまったく含まれていないのに。

『迷惑をかけるだけなのが目に見えて――』

 石坂さんの言葉がよみがえり、すっと気持ちが冷めた。

 せめて彼が望む妻の役割はきちんと果たそう。迷惑だけはかけないようにしないと。

 心の中で誓い、運転する成明さんの整った横顔をこっそりと盗み見した。
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