冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「三神先生が結婚したってもう病院中、大騒ぎなんだよ! 私も信じられなかったけど、先生が左手の薬指に指輪をしているんだもん。しかもね、手作りのお弁当を持ってきてるんだって。看護師さんや患者さんたちの中でも三神先生のファンが多いから、その話でもちきりなの」

 そこで我に返る。硬直する私をよそに、さやかちゃんは目を輝かせながら告げてきた。

 婚約指輪に合わせて、成明さんは結婚指輪も用意した。便宜上のものだと思っていたけれど、意外にも彼は身に着けている。

 既婚者であると知らしめる必要があるから当然かもしれないが、成明さんが私とおそろいの指輪をつけている姿を見るのは、なんともいえない嬉しさと純粋に喜んでもいいのかと葛藤する自分がいた。

 おかげで私は成明さんとは反対に、婚約指輪どころか結婚指輪もつけていない。普段使いするには恐れ多い値段ではあるし、彼に対する想いを自覚して、勘違いしてはいけないと半ば戒めのような気持ちもあった。

 そもそも私が指輪をつけなくても成明さんがつけているだけで万事解決だ。だから、これでいい。

 お弁当は、放っておいたらなにも食べずに過ごしてしまう成明さんのために結婚してから作ることにした。緊急手術などがあって食べられないときもあるそうだが、基本的には持っていってくれている。

 彼の健康だけ考えていたけれど、よく考えたら今までろくに食事をとっていなかった人が、手作りのお弁当を職場で食べるようになっていたら同僚は驚くかもしれない。

 さっきから、まるで特大スクープを押さえたと言わんばかりにさやかちゃんをどうにか落ち着かせる。仮にも彼女はここに心臓の病気で入院しているのだ。興奮状態が続いているのはよくないだろう。
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