冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「今日、久しぶりに採血と注射の両方だったけど、やっぱり注射の方が痛かった」

 軽い口調で訴えるように腕を動かすさやかちゃんに成明さんは微笑む。

「沢田先生から聞いた。頑張ったな」

「うん」

 嬉しそうにさやかちゃんは答えた。私と会うとき、彼女は楽しそうだけれど妙に大人っぽいところがあるのが気になっていた。気を使っているとでもいうのか。

 でも今、成明さんの前では年相応というか素直に甘えられている。その姿にホッと胸を撫で下ろした。

 それは成明さんがさやかちゃんと向き合って、彼女の信頼をきちんと得ているからだ。

「今ね、三神先生の奥さんがどんな人なのかって、小夜さんに聞いていたんだ」

 ところが無邪気に続けたさやかちゃんの発言に、私は固まる。

 ふたりの視線がこちらに向いたが、その目に込められている意味がそれぞれ違うのを悟り、背中に冷や汗が流れた。

「彼女はなんて?」

 成明さんがさやかちゃんに尋ねると、さやかちゃんは軽く首を傾げた。

「そういえば、小夜さんはなにも……」

 不思議そうな顔でこちらを見るさやかちゃんに私はなんて答えていいのかわからず、あたふたする。

「えっと……」

 口ごもっている私に対し、成明さんは軽くため息をついた。その様子を見て、さやかちゃんがなにかを察した表情になる。

「え、もしかして……三神先生の奥さんって小夜さんなの?」

「その、あの――」

「そうだ。彼女が俺の妻なんだ」

 返答を戸惑っている私に、成明さんがさらっと答えた。
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