冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 とぼとぼ駐車場に向かって、見慣れた車を見つけたタイミングで成明さんに声をかけられ、ほぼ待つことなく私と彼は合流できた。

「病院で成明さんを見るのは初めてだったので、なんだか驚きました」

「驚くことはなにもないんじゃないか?」

 さりげなく私から話題を振ると、彼は冷静に返してきた。

「そうなんですけど、本当にお医者さんなんだなって」

 実感できた、と続けようとして言葉を飲み込む。これは聞きようによってはかなり失礼だ。

「小夜に信じてもらえてよかったよ」

「も、もちろん成明さんがお医者さんじゃないなんて疑ったことないですよ?」

 冗談交じりの切り返しに、私は慌ててフォローする。真面目に言っている私に対し、成明さんは口元に笑みを浮かべていた。

 その表情は意外と優しい。

「今朝、早かったみたいですけれど、大丈夫ですか?」

 おかげでお弁当は必要ないと言われてしまった。いつもより早く帰れるのは、その影響もあるのだろう。

「ERの患者の転送で日の出と同時にフライトだったからな」

「成明さん、ヘリに乗ってたんですか?」

 大袈裟な反応になってしまったのは仕方がない。暗いうちから出勤していたが、まさかドクターヘリに乗るためとは。

「ああ。冬場はまだましだが、夏場は日の出が四時台とかザラだからもっと早くなる」

「お、お医者さんってヘリにも乗れないといけないんですね」

 診察や手術、新しい術式の勉強や練習、研究報告など成明さんの仕事は病院だけでは終わらないのはよくわかっていたが、それにしても幅広い。

「全員が全員じゃない」

「余計にすごいですよ。お疲れですよね」

 こんなことなら、やっぱり先に電車で帰るなりして、夕飯やお風呂の準備を急ぐべきだったかもしれない。後悔しつつ成明さんに力強く訴えかける。
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