冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 結局、成明さんが寝たのを見届ける真似はできなかったけれど、成明さんはいつも通り、出勤していった。

 一通りの家事を済ませてから、私は出かける。幸い、寒いけれど天気はいい。今日は私の二十六歳の誕生日だ。

 去年は仕事に追われながらも、結菜が予約してくれた美味しい沖縄料理のお店にふたりで行った。今年はひとりでちょっと贅沢なランチをしようとお店を予約している。

 ゆっくり外で食事をするのは、それこそ成明さんと初めて出会ったホテルのアフタヌーンティー以来だ。

 野菜本来の味を楽しめると大人気のコース料理は、見た目も味も繊細でとても美味しい。

 これ、成明さんも好きな味かも。

 家でも作れるだろうかと調理法を探るようにして、よく味わう。
 誰かに食べさせてあげたい、誰かと食べたいって思えるのは幸せだ。結菜と住んでいたときもそんな瞬間はあったけれど、また違う。

 便宜上でも結婚したから? わからないけれど、これだけははっきり言える。私にとって成明さんは特別な存在なんだ。

「これ美味しい! ブロッコリーが甘い!」

「よかったな。わざわざ予約したかいがあった」

 ふと、近くの席に座るカップルの会話が聞こえてくる。

 幸せそうだな。そんな感想を抱いた瞬間、一抹の寂しさを感じた。それを振り払って、目の前の料理に集中する。大丈夫、今日を満喫するため、はりきってこの後も予定をびっしり入れているのだから。
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