冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
『でもそのおかげで、お父さんが間に合ったから。小夜はお父さんを待っていたのかもね』

 父との記憶はあまりないが、母が父の写真を見せて、こうして思い出を語ってくれる。どれほど父が私を可愛がっていたのか、愛していたのか。

 会えなくても、自信をもって言える。私は両親に愛されていた。

『小夜が結婚するまでは、誕生日は毎年お母さんがお祝いするから』

 さまざまな記憶がよみがえり、行儀悪くソファで膝を抱えた。

 普段、飲まないのに調子に乗って飲みすぎたかも。口当たりが爽やかで油断していたのか、頭がボーとして体が熱くなってくる。

 ケーキもシャンパンも中途半端のままで、幸せだった気持ちが徐々に虚しさに変わっていく。

 成明さんが帰ってくるから、せめてちゃんと片付けておかないと。

 頭の片隅で冷静に訴えかけてくる自分がいるのに、どんどん心が沈んで、体さえ重く感じる。

 せっかくの誕生日なのに……。

 そのとき人の気配を感じたのと同時にリビングのドアが開いて、完全な不意打ちにドキリと心臓が跳ねた。スーツ姿の成明さんが、珍しく息せき切った状態でこちらに近づいてくる。

 彼の姿を捉えた瞬間、一気に血の気が引いて立ち上がった。

「す、すみません。あの……急いでお風呂の準備をします」

 その前に、テーブルの上が散らかったままなのをなんとかしないと。

 完全に油断していた。あたふたしながらケーキを片付けようとしたら彼が隣にやってきた。
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