ポリスラインを翔びこえて



 *



「ちゃんと手土産もった?」

「うん、だいじょーぶだって!」


ほら、と手提げ紙袋を前に掲げる。

今日は犬井くんの家にお邪魔する日。

セイ兄は一緒に行こうかと心配してくれたけど、犬井くんのお友達も来るそうだしお姉さんもいるから大丈夫だと説得してやっと承諾をもらえた。


「じゃあ行ってくるね」

「いってらっしゃい。……あ、待って」

「もう、今度は何ー?」

「ちょっと後ろ向いて、なんかついてる」

「え?」

「あー、虫刺されっぽいな。ちょっと待ってて」

「え、どこー?全然痒くないよ……って、いないし」


開けかけた玄関のドアから手を離してセイ兄が戻ってくるまで靴を履いたまま床に座る。

しばらくして足音が聞こえ、振り返るとセイ兄は虫刺され用のクリームを持っていた。


「ちょっと後ろ失礼」

「……っ、」

「はい、これでよし」

「あ、ありがとう…」

「じゃ、いってらっしゃい」

「い、いってきます…」


満足気に手を振るセイ兄を背後に、あまり目を合わせられず家を出た。
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