ポリスラインを翔びこえて

「うん、好き」


甘くて優しくて、儚い。

受け取ったら何かが変わる?
私のこころのなかにいる赤は、透明な犬井くんで上塗りできる?


「じゃあ目ぇつぶって?」

「ん」


従順な犬井くん。

瞳の色が遮断されたところで、犬井くんがきみだと思えるわけがない。


「私は好きじゃないよ」


甘い声で囁いてみる。

目を閉じて、そっと赤に、口づけをする。

きみじゃないから、こんなに簡単に一線を越えられるんだ。


熱を放す。

伏せたまぶたを上げると、犬井くんは苦しそうな顔で見つめて。


「……蒼羽刑事、ぼくのこと好きじゃないのに」

「ごめんね、つい」

「ひどいよ」

「うん、私は最低な女」

「……っ、あおばまこと、最低」

「ふふ、犬井駆が誘ったんでしょ」

「好きになってほしかった」

「無茶苦茶だよ犬井くん」

「っ……」


泣きそうな犬井くんを見ないようにその左肩へ頭を預けると、え、とつぶやく声が聞こえた。


「これ」


うなじをなぞられてびくっと肩が震えた。

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