ポリスラインを翔びこえて

「やめて、くすぐったい」

「蒼羽刑事って彼氏いるの?」

「は?」


いるわけないじゃん、男いるならこんなことしないよ?

顔を上げると驚いたような呆れたような複雑な表情の犬井くんがいた。


「……いるの?」

「いないよ?」

「じゃあ誰かにうなじ吸われた覚えある?」

「え、うなじ?」


誰かにうなじ吸われた?なにそれ?

うなじといえば今朝家を出る前にセイ兄が虫刺されを見つけてくれたくらいしか記憶にない。

私がそれを話すと、犬井くんは眉をひそめて首を傾げて何かを考えるような仕草をして。

にやりと何かを企んだように笑う。


「それ治してあげる」

「は?」


ぐい、と私の顔を両手で挟んで傾け、右の首筋に顔を埋めてきた。

ちう、と甘噛みされたような感触がして、これはまずい、と思ったときには遅かった。


「あは、さっきのキスこれでチャラにしてあげる」

「っ…!」


すっと私の上から退いて軽やかな足取りでキッチンの方へ向かう。

首筋に残るひりひりした感覚。
それが何か知らないわけない。
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