ポリスラインを翔びこえて
本当は会いたかった。
会いたかったよ、炎くん。
でもそれを言ってしまったら私はまた戻れなくなってしまう──蒼羽家という檻の中に。
「お願い!話を聞いて!」
走って追いつこうとするけれど、炎くんも走り出して必死に手を伸ばしても届かない。
「炎くん!おねがい待って!」
「……」
「ほんとう、は、会いたかった、て言いたかった、けどっ、」
「……」
「そしたら、私は、もうっ、二度ときみにっ、」
「……」
「会えなくなる、からっ、」
はあ、はあ、息が切れ切れで足がもつれそう。
大通りを過ぎてT字路に差し掛かる。
左に曲がった後ろ姿を追いかけて私もその路地に入るけれど。
「……っ!?」
きみの姿はない。
真っ暗な道が続く。
前じゃないなら後ろだ、そう思った瞬間。
「アオちゃん」
「っ、」
後ろから覆われる。
温かい吐息が耳を溶かす。
密着した体温はきみの胸から私の背中へ伝導する。