ポリスラインを翔びこえて
「仕事だったんだよね?」
「うん、事件の担当になってから忙しいの」
「……」
「な、なに?そんな上から下までじろじろ見ないでよ」
「…シャツのシワやけに多くない?」
「っ、別に普通だよ、」
「……」
するとセイ兄はぐっと私に近づき両肩を掴んで頭頂部を嗅ぐように顔を落とす。
ぞわっと悪寒がした。
気持ちわるい。吐き気が襲う。
触れないで。嗅がないで。近づかないで。いやだ。
「や、やめてっ!私に触らないで!」
「っ、」
思わずドン、と力任せに押しのけて離れる。
初めてこんな態度を取ってしまったおかげでセイ兄は驚いた顔で一瞬固まる。
その隙に素早く壁とセイ兄の間をすり抜けてお風呂場まで走った。
触れられた肩をシャワーで流す。
無心でゴシゴシ泡立てていたら、肌が薄紅に染まっているのに気づいて我に返る。
「……っ、」
視界が水道水以外の水分で歪む。
ぐっとこらえる。
のどから込み上げる痛みを丸呑みする。
シャワーを顔面から浴びる。
……泣いてたまるか。
もう絶対にセイ兄の前では崩れない。
心を許さない。負けない。
そう胸に警戒心を飼ってお風呂からあがる。
「……あ、」
パジャマの上がない……。
もしかして廊下で落としたか。
まあ裸じゃないだけマシかと思いタオルを前に抱いて部屋へ戻ろうと廊下に入ると。
「……、」
自室のドアが少し開いてそこから光が漏れている。
帰ってきて部屋の電気は点けていない。
ベッドサイドの間接照明はこんなに明るくない。
すなわち誰かの仕業……そんなの一人しかいない。