ポリスラインを翔びこえて
「なにしてるの、セイ兄」
私が今日着たコートを。
それをセイ兄が抱くように持っていて、埋めていた顔をゆっくり上げる。
「身辺調査だよ」
「……なんでそれ嗅いでんの」
「男のにおいがする。誰と会った?」
「職場は男だらけよ」
「煙草、酒、い草……畳かな。どこ行った?」
「職場近くの居酒屋で夕飯食べたわ」
「ふーん……で、服着ないの?」
「え……あ!こ、こっち見ないでっ」
そうだった。
パジャマの上がなくて下着丸出しだった。
落ちてたよ、と顔を背けつつ服を渡してくれるセイ兄。
どうも、と小さく返事して受け取ろうと手を伸ばす。
さっと服を着てセイ兄を見れば、私のスマホを触っていた。
「今日はシロかな」
そう呟いてスマホを置くと、にっこり笑って私の頭をぽんぽん叩き部屋を出て行った。
……うまくごまかせたみたいだ。
心の中でガッツポーズ。
大丈夫。まだ、大丈夫。
──『アオちゃんやだ、壊れそう』
大丈夫だよ炎くん、私はまだ壊れてなんかいないよ。
負けるもんか。
運命とか正義とか悪とか知らん。
そんなの私の中でとっくに粉々。
だけど、私はまだ大丈夫だ。
きみがいれば立っていられる。