ポリスラインを翔びこえて
「でもニンゲンには、理性があって、倫理があって、秩序がある」
そっか。この言葉って、昔私がセイ兄からもらった言葉だったんだ。
セイ兄が紡いだそれには続きがあることも蘇ってきた。
「だから、嘘をつくとこころが苦しくなる、でしょ?セイ兄」
こくりと頷くセイ兄の顔は、切ない気持ちを押さえ込んでいるようで、とても息苦しそうに見えた。
「もし僕が嘘をつかなくてもいいなら」
「……、」
「きっとまこちゃんはここにいない」
「ど、どういうこと?」
低く唸るような声。
セイ兄の手が震えている。
言葉の意味も震える理由もわからなくて戸惑う。
「まこちゃん、僕はもう限界だ」
「え?」
セイ兄のなかで何かが爆発したみたいな勢いだった。
ガシッと手首を掴まれる。
は、と身構えた時には既に視界が逆転する。
背中にベッドの感触。覆う影。咄嗟に両腕を前でクロスして身を翻そうとするも虚しく。セイ兄の力強い両手は私の両手首を拘束してビクともしない。