ポリスラインを翔びこえて

「……離れて」


いつのまにか動きを制御されていたのは私のほうだった。

警察学校で培った基本的な逮捕術は、ホムラマコト相手では通用しない事実に動揺が隠せない。

そこらの一般人ではないことを察すると当時に、ゾクゾクと得体のしれない感情が湧いたことにも困惑する。


「捜しものはこちら?」


ぴら、と目の前で紙切れを振る。


「っ、それどこで!」

「昨日ここで」


そう言ってゆっくり離れていく彼の体温。
やっと解放された熱は夜風に吹かれて消えた。


「大事なものなの。返してくれない?」

「うん、いいよ」


ありがとう、と言って差し出された写真に手を伸ばすも、触れる寸前で消える一枚と捕らわれる手首。


「ちょっ、なに、」

「今夜だけ一緒に過ごして」

「え、」

「変なことはしないから、お願い」

「へ?」

「ただ一緒にいたいだけ」

「え、っと…?」

「承諾しないなら返さない」

「はい?」

「交換条件」

「……」


つまり、写真を返してほしければ彼と今夜を共にすればいいと?
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