ポリスラインを翔びこえて
不可解な提案に戸惑うも、どうやらホムラマコトは本気らしい。
少し淋しさの滲む瞳が、私の母性か慈愛心か何かしらをくすぐってくるから。
「わかった、承諾するわ」
断るという選択肢はもとから存在しなかったかのように速やかに契約は成立した。
「ねえ、どこ行くの?」
ぐんぐん手を引かれてどんどん賑やかな繁華街の奥へ。
黙ったままの背中は大きく逞しく、けれど何だか切ない。
なんだろう、この感じ。
懐かしいような、苦しいような、言語化できない酸っぱい気持ちが押し寄せる。
……私、彼とどこかで会ったことがある?
「んぎゃっ」
ドン、と顔面衝突したのは急に止まった彼の背中で、ぼうっとしていた私のせいでもある。
「……入るよ」
「ここは?」
「俺の店」
ホムラマコトの店?
彼は経営者かオーナーなの?
中に入ると一番にワイングラスやボトルが綺麗に陳列された光景が広がり、暗がりの中でもここはバーだとわかった。