ポリスラインを翔びこえて
「あのさ、話があるんだけど」
「私は話すことない」
「ホムラマコトのこと」
「っ……」
「入っていい?」
「……うん」
あの男のことになると手のひらを返すように素直になる。
単純なのか馬鹿なのか、そんなところさえもかわいいと思ったりする。
「その前に、昨日はごめんね」
「っ、」
「謝って許されることじゃないのはわかってる。だけど僕は一生かけて反省する。まこちゃんは大事な存在で、失いたくない存在で、それは僕にとってこの先もずっと変わらないから」
「……」
「だからお願い、これから話すことは僕にとっても苦しいけど、ちゃんと聞いてほしい」
「……」
しばらく黙ってうつむいていた彼女は、ゆっくり顔を上げて肯定の視線を向ける。
許しはしないけど仕方がないから聞いてやるよ、そんな表情。
彼女はもうどんな残酷な現実も受け入れられるのかもしれない。
これまで彼女の苦しむ姿を見てきた中で一番、強い女性の顔だった。
「とりあえず座ろうか」
「…うん」