ポリスラインを翔びこえて
*
「着いたよ」
「ここは……」
そこは初めて一晩をともにしたあのお店だった。
エレベーターで最上階まで昇りあの日と同じ部屋へ入る。
「着替え持ってくるから休んでて」
「ありがとう」
大きなバスタオルを掛けてくれた炎くんは奥のクローゼットへ向かう。
ふと窓のカーテンが開いていて、あの日の青空を思い出しながら近づくと眼下には息を呑むほど美しい夜景が広がっていた。
「綺麗……」
この街はこんなに美しい。
そこへ飛び込んでしまえば、私みたいに心身ボロボロで不純な愛から生まれた汚い存在さえも全てを呑み込んで浄化してくれそうだと思った。
「アオちゃん」
やさしい声。
大好きなきみの声。
もう、いっそ、このまま一緒に。
なんて無理だ。
「炎くん、私ね」
「うん」
「ほんとうの父親をみつけたんだ」
「……うん」
「それからね、ほんとうの母親も、みつけたんだよ」
「……うん、」
「でももうこの世にいない」
「……アオちゃん、」