ポリスラインを翔びこえて
でも、誰かにとっての正義は誰かにとっての悪でもある。逆も然り。
それならさ、この世にははじめから、正義も悪も存在しないんじゃない?
それなら私の大好きなきみは。
ホムラマコトは、
わるい人じゃない。
エレベーターが到着した。
ゆっくりドアが開く。
セイ兄が先に入る。
私もホムラマコトの背中に手を添えてゆっくり前へ進む。
「今から押すから、全速力で走って」
「え?」
「逃げて!」
ぐっと炎くんの背中を、非常階段めがけて力いっぱい押す。
前のめりになって駆けていく。
セイ兄が瞬時に動く。
咄嗟に両手を広げて立ち塞ぐ。
と、同時に響く、発砲音。
「うっ……」
後ろに吹き飛ばされて倒れる。
「アオちゃんっ」
痛い痛い痛い痛い、腹部が焼けるように猛烈な痛みが走って思わず手で抑える。
呼吸が乱れる。
視界がぼやける。
そっと手のひらを見下ろせば、
真っ赤に染まった私。
「あ、ああ……まこちゃんっ、しっかり……っ!」
聴覚が消える。
意識が遠のく。
すべての感覚を、失った。