ポリスラインを翔びこえて
Episode Ⅰ
……────11月の夜。
少し冷たい空気の中、きらびやかな街を彷徨う。
「はあーー」
今日もだめだった。もう半年は繰り返した。
やはり古すぎるんだ、この色褪せた一枚は。
いつのものか正確にはわからないけれど恐らく私が1歳くらいだろうから、もう20年は経っている。
“ほんとうの父親”を捜している。
千人斬りのヤクザという根も葉もない噂を頼りに。
私と“父親”が枠に収められている写真を頼りに。
だから今夜も、繁華街を彷徨っていた。
ふと人の気配がして手元の写真から顔を上げると、目の前を横切る赤。
「……!」
ふわりと漂う生臭い鉄の香り。
白いシャツに赤い絵の具が跳ねたような鮮血の痕が遠ざかる。
直感が危険信号を鳴らした。
咄嗟にその背中を追いかける。
「そこのきみ、止まって!」
騒がしい繁華街の裏路地は静かで、私の声だけが反響する。