ポリスラインを翔びこえて
「そうするしかなかったんだ。世間は厳しい。もし公になっていたら警察の信頼はドン底、助けを求めたくても躊躇され、犯罪者に舐められては今ごろ治安も秩序も再構築できないほどに乱れて歪んていってしまっただろう」
「……っ」
何も言い返せなかった。
警察に対する信頼はそれほど大事なもの。
それを大きく損なうことは決してあってはならない重大な事件。
真実を隠すことは警察組織の…いや、日本の未来を守ることにもなる。
真実を隠すこと、それは私にとって悪で、私以外にとっては正義だ。
やっぱりこの世界には、正義とか悪とかそんな境界線なんてはじめから存在しないんだ。
「はじめから……正義のヒーローなんて、存在しないんだねぇ……」
そうこぼれた子どもじみたセリフは、きっと炎くんが聞いたらそうかもねって肯定してくれそうだなと思った。
決して誰かを否定しないきみは一番に自分を否定するから。
だから私は、そばにいて守ってあげたかったんだろうな。
そして笑っていてほしかったんだろうな。