ポリスラインを翔びこえて

そこから裁判にかけるかどうかを判断するのは法の専門家である検察官の仕事で、警察が集めた証拠や証言、捜査内容を吟味し罪に問えるかどうかを確認する。

もし犯罪の証拠が十分にあって、他に正当防衛などの阻却事由がなければ被疑者は起訴され、裁判が始まる。

逆に歌川くんの言う嫌疑不十分とは、犯罪の疑いはあるものの証拠が十分に足りないため起訴するに至らないということ。
「疑い」の段階では罪に問えない、という法の精神だ。


「ど、どうして……?歌川くんが何か気を利かせてくれたの?」

「ボクは検察官として事実を確認し判断をしたまでです。誰かに取り入ることなど決してしませんよ、たとえ蒼羽さんでも」

「そ、そうですよね」


歌川くんは分厚い眼鏡のフレームをくい、と直して続ける。


「今回の事件に関して、被疑者には傷害の疑いがありましたが、蒼羽さんの証言や現場の状況を照合すると彼はあなたを救出するための行為だった可能性を否定できません」
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