ポリスラインを翔びこえて

「ねえアオちゃん」

「…蒼羽よ」

「アオちゃんにとってヤクザは悪?」

「うん。どんな理由があっても人を傷つけちゃだめだよ」

「自分が殴られても?」

「やり返しちゃだめ。まず言葉で解決するの。言葉が通じないなら逃げるの。それが正義よ」


それが、私の……蒼羽家の、教訓。


「あはは、アオちゃんらしいや」

「そう?」

「その正義、曲げないでいてね」

「私は滅多なことでは揺るがない性格なの」


くい、とジンジャーエールを流す。
強炭酸がのどごしを切る。

私たちは延々と他愛もない会話をした。

なぜ鳥は鳴くのか。なぜ宇宙は広いのか。なぜ火は朱いのか。そんな哲学チックな話から。

好きな食べ物は。初めて飲んだお酒は。海派か山派か川派かインドア派か。そんな趣味嗜好まで。

ほんとうにくだらないことばかりで会話の内容はほとんど記憶にないけれど。

楽しい時間だったこと、それは間違いない。

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