ポリスラインを翔びこえて
Episode Ⅸ
パァーーーン!
乾いた音が響く。
──『俺も大好きだよ、アオちゃん』
その瞳は閉じていて、私を見ずにそう告げた。
私はここにいるのに。
銃声の残響が耳の奥でこだまする。
セイ兄は撃った。
セイ兄は、ホムラマコトを、撃って、そして、力なく銃をおろして、それはガチャン、と音を立てて落ちた。
銃の落下音と同時に、どさ、と前へ伏せ落ちるきみ。
じわじわと赤が床を染める。
ぽろぽろ、止まらない、濁流の涙。
視界がぼやけて、もう、何も見えない。
見たくない。
死にたい。
私も、そこに、連れてって。
「うわあああああああああああっ」
立ち上がって目の前にいた烏魔を思いっきり蹴飛ばす。
ゴンッと鈍い音を立ててテーブルの角に骨を打ち付ける音がして気絶したように動かない。
そんなの気にせずドカッ、ドカッ、と何度も何度も、腹、肩、顔、首、腕、脚、腰、全身の黒を踏みにじって蹴って踵を落として。
無心でひたすら、そこにかなしみをぶつけて。
痛い。胸の奥がミシミシ、ギシギシ、音を立てて裂けていく。
苦しい。いやだ。お前のせいだ。ぜんぶ全部お前が!
死ね、死ね、死ね、死ね、私!!
だんだん足が痛くなって、それでも蹴って、次第に感覚がなくなっていく。
関節が力を放棄し、立っていられなくなり、ガクン、と膝をつく。
「はあ、はあ、っ……ううっ……」
それでも涙は止まらなかった。
次々と溢れて溢れて止まらない。
なんで。なんで、こんなことに。
私がいなければ。
私が恋をしなければ、こんなことには。
「くそぉっ!」
叫び声はかすれていた。