ポリスラインを翔びこえて
でももし、炎くんが自ら犠牲になるというこの残酷な計画をあらかじめ知っていたところで、私はきみを救い出せたのだろうか。
幼い頃はただ両手を広げて立ちふさがればきみを救えたのに。
今はもう、それだけじゃきみを守れないほど複雑でしがらみだらけで、私はただの無力だった。
「アオちゃん、ありがとう」って笑ってくれるきみはいない。
「大好きだよ」って伝えてくれるきみはいない。
「帰したくない」って甘えてくれるきみはいない。
「会いたかった」って抱きしめてくれるきみはいない。
二度と、その笑顔は見られない。
二度と、その声は聞けない。
二度と、その手が首を締めることはない。
二度と、その温度に触れることはない。
二度と、もう二度と、会えない。
つう、と頬にあたたかいものが流れた。
まばたきをするたび、それは一筋の熱を燈す。
「……まこちゃん……」
震える指先が箸を落とす。
立ち上がってリビングを出る。